合同式のエッセンスは全て時計の文字盤にあるのだ
合同式とは?
大学入試の整数問題でもたまに活躍する考え方。
合同式。
今回は合同式について学んでいきます。
合同式を一言で表現するなら、
割り算した時のあまりに着目した式
のことです。
余りが同じなら、同じものとみなすよ、というイメージです。
この考え方が最も自然に日常生活で活用されている例が、時計。
Clker-Free-Vector-ImagesによるPixabayからの画像
我々は、13時のことを、午後1時と認識します。
実際、時計の文字盤上では、1時と13時の表し方に区別はありません。
時計の世界においては、1と13は同じものとして扱われています。
なんなら、真夜中に作業している人は、
うわ、もう25時!?1時じゃん、日にち変わってるじゃん!!
と思ったことは一度や二度ではないでしょう(マスタノ調べ)
時計の世界では、
1時、13時、25時 は全て1時とみなされます。
これらの共通点は何かというと、
12で割った余りが1である
という点です。
実際、
$1=12×0+1$
$13=12×1+1$
$25=12×2+1$
です。
「13と25は12で割った余りが等しいです」$\cdots ㋐$
これを数式で表現したものが合同式です。
「$13 \equiv 25 (\mod 12)$」$\cdots ㋑$
と表します。
㋐と㋑は全く同じ意味です。
「13と25は法12に対して合同」
という表現もあります。
ふーん、と思っておきましょう。
これらをもう少し数学っぽく堅苦しい表現をするなら、次のようになります。
(定義)
$kを正の整数とし、aとbは整数であるとする。$
このとき、$a$を$k$で割った余りと$b$を$k$で割った余りが等しいならば、
$a \equiv b (\mod m)$と表し、
$a$と$b$は法$k$に対して合同である
という。
別表現として、
$a \equiv b (\mod k)$は、
$a-b$が$k$の倍数
と捉えることもできます。
それを補足で説明しましょう。
いま、$a$と$b$は余りが等しいので、
適当な商$s, t$と共通のあまり$r$を用いて
$a=sk +r$←$a$を$k$で割った余りは$r$
$b=tk+r$←$b$を$k$で割った余りは$r$
と表されます。
$a-b=(sk+r)-(tk+r)=k(s-t)$
となり、$a-b$は$k$の倍数となります。
逆もまたしかりです。
つまり、
$a \equiv b (\mod k)$を示したかったら、
$a-b$ が$k$の倍数であることを示せばよいのです。
合同式の計算法則
新しい数の世界を手に入れたとき、どうするか。
答えは一つ。
今までの計算法則が同じように適応できるか調べる。
これです。
平方根を習ったときも、対数を習ったときも、ベクトルを習ったときも、
教科書は必ず計算法則の確認からスタートするはずです。
合同式だって例外ではありません。
まずは四則演算の確認から行っていきます。
(1)加法
例えば、$13 \equiv 25 (\mod 12)$でした。
両辺に$7$を加えたとして、
$13+7 \equiv 25+7 (\mod 12)$は成り立つでしょうか?
新しい数の世界を手に入れたときは、
こういった一見当たり前のことも真面目に検証する価値があります。
$13+7=20$
ここで、$20$を$12$で割った余りは$7$ですので、
$20 \equiv 8 (\mod 12)$です。
一方、
$25+7=32$です。
$32$を$12$で割った余りは$8$なので、
$32\equiv 8 (\mod 12)$です。
よって、$13+7 \equiv 25+7 (\mod 12)$は確かに成り立ちそうです。
念のためこれを証明しておきましょう。
$a \equiv b (\mod k)$かつ$c \equiv d (\mod k)$のとき、
$a+c \equiv b+d (\mod k)$が成り立つ。
(証明)
$(a+c)-(b+d)$ が$k$の倍数であればよい。
$a \equiv b (\mod k)$であるので、
$a-b=ks$ $(sは整数)$
である。
同様に、
$c-d=kt$ $(tは整数)$である。
$(a+c)-(b+d)=a+c-b-d$
$=(a-b)+(c-d)=ks-kt=k(s-t)$
となり、$(a+c)-(b+d)$ が$k$の倍数となるので、
$a+c \equiv b+d (\mod k)$が成り立つ。
(証明終了)
(2)減法
加法とほとんど同じです。
$13 \equiv 25 (\mod 12)$ですが、
例えば$13-2 \equiv 25-2 (\mod 12)$が成り立ちます。
文字に置き換えて先ほどと同じように証明しておきましょう。
$a \equiv b (\mod k)$かつ$c \equiv d (\mod k)$のとき
$a-c \equiv b-d (\mod k)$が成り立つ
(証明)
$(a-c)-(b-d)$ が$k$の倍数であればよい
$a-b=ks, c-d=kt$に注意すると、
$(a-c)-(b-d)=(a-b)-(c-d)=k(s-t)$
となり、$(a-c)-(b-d)$は$k$の倍数である
よって、
$a-c \equiv b-d (\mod k)$
(証明終了)
次に行きましょう
(3)乗法
$13×2 \equiv 25×2 (\mod 12)$は成り立つでしょうか?
$13×2=26 \equiv 2 (\mod 12)$
$25×2=50 \equiv 2(\mod 12)$
です。どうやら、
$13×2 \equiv 25× 2$も成り立ちそうです。
証明していきましょう。
$a \equiv b (\mod k)$かつ$c \equiv d (\mod k)$のとき
$ac \equiv bd (\mod k)$が成り立つ
(証明)
$ac-bd$ が$k$の倍数であることを示せばよい。
$a-b=ks, c-d=kt$であるので、
$a=ks+b, c=kt+d$である。
よって、
$ac-bd=(ks+b)(kt+d)-bd$
$=k^2st+ksd+ktb+bd-bd$
$=k(kst+sd+tb)$
となり、$ac-bd$は$k$の倍数であった。
よって、
$ac \equiv bd (\mod k)$が成り立つ
(証明終了)
ラストです
(4)除法
除法は、要するに$ac=bc →a=b$が成り立つかな?ということです。
加法・減法・乗法が今まで通りだったので、具体例を確かめるまでもなく、
これも成立しそうですが、念のため確かめておきます。
例えば、
$32 \equiv 8 (\mod 12)$
$20 \equiv 8 (\mod 12)$
なので、
$32 \equiv 20$です。
よって、
$8×4 \equiv 5×4 (\mod 12)$
です。
では、両辺を4で割りましょう。
$8 \equiv 5 (\mod 12)$
にならない!!!
そうなんです。
今まで普通に使っていた
$ac=bc$→$a=b$
という変形は、合同式の世界では当たり前には成り立ちません。
このように、新しい数の世界では、当たり前が通用しない場合があります。
だから、チェックが欠かせないんです。
合同式の場合、
$ac \equiv bc (\mod k)$のとき、
$c$と$k$が互いに素な場合に限り、
$a\equiv b (\mod k)$が成り立つ。
普通の数の世界と違って、
「互いに素」という条件を付けなければならないのです。
$ac \equiv bc (\mod k)$かつ、$c$と$k$が互いに素であれば、
$a \equiv b (\mod k)$となる。
(証明)
$a-b$ が$k$の倍数であればよい
$ac \equiv bc (\mod k)$であるので、
$ac-bc$ は$k$の倍数である。
$c(a-b)=nk$ $(nは整数)$
条件より、$c$と$k$は互いに素であるので、
$c$が$k$の倍数になることはありえない。
よって、$a-b$ が$k$の倍数である。
したがって、$a\equiv b (\mod k)$が成立する
(証明終了)
まとめ
いかがでしたか?
・合同式は、あまりだけに注目した数の世界
・合同式の世界では、加法・減法・除法は今までと同じように成立
・除法だけは、「互いに素」という条件が必要
といったところを押さえていただければパーフェクトです。
ではまた次の記事でお会いしましょう!
コメント