一次合同式を解く2つの方法と、解けるための条件

合同式の方程式

前回、時計の文字盤と同じ考え方で、合同式の世界を理解した。

次に、合同式の世界における四則演算について確認した。

じゃ、次は?

次に何をしらべよう?

→方程式を調べてみないか??

$2x\equiv 1 (\mod 5)$解ける

$2x \equiv 1 (\mod 4)$解けない

何が違う??

目次

一次合同式とは?

今回は一次合同式について学んでいきます。

簡単に言えば、

$ax \equiv b (\mod k)$

となるような整数$x$を求めることを、

一次合同式を解く、と言います。

我々が普段使っている数の世界では、

これはそう難しい問題ではありませんでした。

例えば、

$2x=1$

を解いてみましょう。

両辺を$2$で割って、

$x=\dfrac{1}{2}$

です。

そりゃそうです。

中学1年生で習って以来親しんできた一次方程式そのままですから。

しかし、合同式の世界でこれをしようとすると、

途端に状況が複雑になります。

例えば、

$2x \equiv 1 (\mod 5)$

を解いてみましょう。

困りませんか?

さっきのように両辺を$2$で割ろうにも、

$\dfrac{1}{2}$は整数ではありません。

合同式の世界では、

割った余りが等しい数たちを扱っています。

余りが分数になることはないので、

合同式の世界では分数を扱うことはできないのです。

では、どうするか??

答えは、シンプル。

ちょっと原始的ですけど、

代入作戦です!

$2x \equiv 1 (\mod 5)$

は、5で割った余りの世界です。

整数を5で割った余りは、0,1,2,3,4

しかありません。

なので、$x$に0,1,2,3,4を順番に代入していけば

いつかは答えにたどり着くはず。

試してみましょう。

$2x \equiv 1(\mod 5)$

に$x=0$を代入しましょう。

$2x=2×0=0$

これは1と合同になりようがありません。駄目です。

次に$x=1$を代入しましょう

$2x=2×1=2$

2は1と合同ではありません。

次です。$x=3$ならどうだ!!

$2x=2×3=6 \equiv 1 (\mod 5)$

これです!!

答えは見つかりましたが、折角なので$x=4$もやるだけやっておきますか

$2x=2×4=8 \equiv 3(\mod 5)$

以上のことから、

$2x\equiv 1 (\mod 5)$

を満たす整数$x$は、

$x=3$

でした!!

このことから、$\mod 5$の世界では、

$3$が$\dfrac{1}{2}$と同じような働きをすると解釈できます。

(ちょっと難しい言葉を使うなら、$\mod 5$ の世界では、2の逆元は3ということです。)

代入作戦を頑張れば、面倒ではあるものの、一応答えは求まりそうです。

本当にそうでしょうか??

少しだけ条件を変えて一次合同式を観察しなおしてみましょう。

例えば、

$2x \equiv 1 (\mod 4)$

を解いてみましょう。

整数を4で割った余りは0,1,2,3です。

$x=0$を代入してみましょう

$2x=2×0=0$

駄目です。次です。$x=1$

$2×1=2$

駄目です。次! $x=2$

$2x=2×2=4 \equiv 0 (\mod 4)$

駄目か… なら$x=3$だ!!

$2x=2×3=6 \equiv 2 (\mod 5)$

あれ!?

$2x \equiv 1 (\mod 4)$

って、解が存在しなくない?

そうなんです。

一次合同式は、解が存在する場合と、存在しない場合があります。

いつでもできるわけではないわけです。

では、解ける場合と解けない場合の違いはなんでしょう?

それに、例えば

$3x \equiv 1 (\mod 100)$

とかを考えだしたら、代入作戦では限界があります。

そこで、合同式の割り算の時のルールを参考に、

もう少し考えを深めていきましょう!

キーワードは、「互いに素」です

一次合同式のはどんなとき解けるのか?

先ほどは代入作戦で方程式を解いていきましたが、このやり方は$\mod n$の$n$の値が大きいとき大変でした。

そこで、脳筋代入作戦ではなく、合同式本来がもつ性質に着目していく必要があります。

$2x\equiv 5 (\mod 7)$

を解いてみましょう。

合同式の別表現として、差が$\mod n$の$n$の数の倍数になっている、というものがありました

すなわち、

$2x-5=7k$ $(kは整数)$

これを変形すると、

$2x-7k=5$

となります。

これ、どこかで見たことありませんか?

一次不定方程式です!!

途中経過は省略しますが、

$2x-7k=5$

を解くと、$x=7m-15, k=2m-5$ $(mは整数)$です。

$x=7m-15$を $\mod 7$で考えましょう。

ちょっと途中式を書きすぎかもしれませんが、ご容赦を。

$x=7m-15 \equiv 0×m-15 \equiv -15 \equiv -15+0 \equiv -15+7 $

$\equiv -8+0 \equiv -8+7 \equiv -1+0 \equiv -1+7 \equiv 6 (\mod 7)$

つまり、$2x \equiv 5 (\mod 7)$

の解は、$x \equiv 6 (\mod 7)$ となります!

できました!!

解いて見て分かったこと。

合同式の方程式が解けるための条件は、一時不定方程式が解ける条件と一致する

ここで、大活躍した一次不定方程式についておさらいしましょう。

一次不定方程式

$ax+by=c$

が解けるための条件は何でしたか?

それは、$c$が$a$と$b$の最大公約数の倍数であること

つまり、

$ax=b (\mod k)$

が解けるための条件は、

$b$が$a$と$k$の最大公約数の倍数であること、

となります。

ちょっと難しい記号を使うと、

$b$が$GCD(a, k)$の倍数であること、となります。

証明

定理

$ax \equiv b (\mod k)$

を満たす整数$x$が存在するための必要十分条件は

$b$が$GCD(a, k)$の倍数であることである。

~脳内会議~

素直に先ほどの一次不定方程式の話を持ち出していきましょう。

(証明)

いま、$ax \equiv b (\mod k)$より、

$ax-b=km$ $(mは整数)$となる。

よって、

$ax-km=b$

いま、条件より$b$は$GCD(a, k)$の倍数であるので、

この一次不定方程式は解くことができる。

その解を$x=x’, m=m’$と置くすると、

$ax’ =b+km’ \equiv b+0×m’ (\mod k)$

となり、

$ax’ \equiv b (\mod k)$

が成り立つため、$ax \equiv b (\mod k)$

を満たす$x$の存在を確かめることができた。

(証明終了)

まとめ

いかがでしたか?

・$ax\equiv b (\mod k)$は一応代入作戦で脳筋すれば解ける

・$ax\equiv b (\mod k)$を解くことは本質的にはに1次不定方程式を解くことと同じ

・ゆえに、解けるための条件も1次不定方程式と同じ

この3点を抑えていただければと思います

ではまた次の記事でお会いしましょう!

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 「一次合同式はどんなとき解けるのか」のところで、「一次不定方程式が解けるための条件は何でしたか?それは、Xがaとbの最大公約数の倍数であること」となっていますが、これだと、「ax=b(mod k)が解けるための条件がbがaとkの最大公約数の倍数であること。」という後半の文とつながらなくないですか??
    整数解が出るか?の条件が「(解)xが~の倍数であること」っていうのはなんか違う気が。でもどこが違うのかは全く分からないのですが。。あってたらすみません。

    modで不定方程式が解ける、といやり方は分かったけどなんでそんな方法を思いつけるかなぁ、って彷徨ってたらこちらにたどり着いて、合同式を変形したら一次不定方程式になる、って記述を見てすっきりしました!

    • だいふくさん
      コメントありがとうございます。

      >「一次不定方程式が解けるための条件は何でしたか?それは、Xがaとbの最大公約数の倍数であること」となっていますが、これだと、「ax=b(mod k)が解けるための条件がbがaとkの最大公約数の倍数であること。」という後半の文とつながらなくないですか??

      数式の打ち間違いがありましたので、訂正します。
      正しくは「Xがaとbの最大公約数の倍数であること」→「cがaとbの最大公約数の倍数であること」です。

      後半とのつながりも補足します。
      ax+by=cが解けるための条件は、cがaとbの最大公約数の倍数であることです。
      ax=b(mod k)は、要するに
      ax-b が k の倍数であるという意味なので、
      ax-b=ky (yは整数)と表すことができ、
      ax-ky=b
      となります。
      これが解けるための条件は
      bがaとkの最大公約数の倍数であることとなり、一次不定方程式と合同式がつながります。

      本記事がだいふくさんの理解の一助となれたようで大変うれしく思います。
      また、違和感のご指摘ありがとうございました。
      今後も数学をエンジョイしてくださいませ。

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