連続する数の和を研究!
さあ、研究の楽しみ方第1弾は、連続する数の和を扱っていきます。研究の手順は、
①観察 ②規則性を発見 ③証明 ④条件を変えて再度観察
の4つのステップで進めていきます。順に見ていきましょう!
観察
観察のステップでは、とにかくデータを集めることが大切です。連続する数を足しまくります。ひとまず3つくらいで試してみましょう。
$1+2+3=6$
$2+3+4=9$
$3+4+5=12$
$4+5+6=15$
$5+6+7=18$
このような感じで進んでいきます。もう少し観察データを収集してもよいですが、今回は次へ進みましょう。
規則性を見つける
先ほど観察したことを基に、規則性を見つけていきます。
左辺は連続する3つの自然数です。では右辺はどうでしょう?先ほど観察した式の右辺の値だけ並べてみます。
$6, 9, 12, 18 …$
これらの数に共通する規則としては、$3$の倍数である、ということがあげられます。
今までのことをまとめるとこうです。
連続する3つの自然数の和は、3の倍数になる。
こうして数学における「予想」がうまれます。しかし、観察結果をもとにした予想は、あくまで予想です。
全部の場合で成り立つかはまだ分からないので、「証明」という手続きを踏んで「予想」を「定理」に進化させてあげる必要があります。
証明
「連続する3つの自然数の和は、3の倍数となる」この予想を証明していきます。証明の方法もいろいろありますが、今回は素朴に文字を使って進めていきましょう。初めに、「連続する3つの自然数の和」という条件を文字を使って表現することになります。無難に、$n, n+1, n+2$と表すことにしましょう。
証明
連続する3つの自然数を順に$n, n+1, n+2$とする。
$n+(n+1)+(n+2)=3n+3=3(n+1)$
よって連続する3つの自然数の和は3の倍数となる
証明終了
条件を変えて再度観察→規則性を発見→証明
研究の楽しさ。その真骨頂はまだまだここから。
「連続する3つの自然数の和は、3の倍数のなる」この定理をもう少し掘り下げてみてみます。定理を掘り下げるポイントは、「条件」と「結果」を分けて捉えることです。
今回の例で言うと、「連続する3つの自然数の和」が条件、「3の倍数になる」が結果に相当します。
ここから条件を少し変えてみます。「連続する3つの自然数の和」ではなく「連続する5つの自然数の和」ではどうでしょう? 果たして連続する5つの自然数の和は、5の倍数になるでしょうか?観察してみます。
$1+2+3+4+5=15$
$2+3+4+5+6=20$
$3+4+5+6+7=25$
なりそう!「連続する5つの自然数の和は、5の倍数になる」これはどうも成立しそうです!
このように、定理が成り立つ条件を広げていく作業を一般化といいます。
3の場合と5の場合で成り立つ定理は、他の数の場合でも成り立ちそうです。
さらなる一般化ができるのではないか!?と期待に胸が膨らみます。すなわち、
連続する$n$個の自然数の和は、$n$の倍数になる
これが成り立つのではないか?という予想です。
色々試してみましょう。$n=6$の場合はどうでしょうか?
$1+2+3+4+5+6=21$
あぁ!$n=6$の場合は成り立たない!でもあきらめてはいけません。$n=3$の場合と$n=5$の場合では成り立ったのです。
つまり、うまくいく場合と、うまくいかない場合があるということを発見したことになります。
次の段階としては、どんなときにうまくいって、どんなときにうまくいかないのか。
うまくいく場合と、うまくいかない場合の条件の違いに着目して規則性を見つけていきましょう。
色々調べてまとめてみると、次のようになります。
上手くいく場合 $n=3, 5, 7, 9, $
上手くいかない場合 $n=4, 6, 8, $
どうですか?なにか規則性は見つかりましたか?
どうやら次のような定理が成り立ちそうです。
$n$が奇数の時、連続する$n$個の自然数の和は$n$の倍数になる
証明には数学Bで習う等差数列の和の公式を利用します。
未修の人でも分かるように、いわゆるガウスの方法を使いますが、
分かりにくいと思うので、等差数列の和の公式が未修の人は注意してください。
証明
奇数$n$を$n=2k-1$と置く。$k=1, 2, 3, \cdots$
$a$を自然数として、連続する$n$個の自然数の和を
$a, a+1, a+2, …, a+2k-2$と置く。
ここで、$S=a+(a+1)+(a+2)+\cdots $ $+(a+2k-2) \cdots ①$とする。
また、$S=(a+2k-2)+\cdots +(a+2)+(a+1)+a \cdots ②$であるので、
①+②より、
$2S=(2a+2k-2)+(2a+2k-2)+(2a+2k-2)+\cdots +(2a+2k-2)$
$2S=(2a+2k-2)×(2k-1)$両辺を$2$で割って、
$S=(a+k-1)×(2k-1)$
今、$n=2k-1$であったので、
$S=(a+k-1)×n$
よって、$n$が奇数のとき, 連続する$n$個の数の和は$n$の倍数となる。
証明終了
まとめ
いかがでしたか?証明の楽しみ方、特に観察→規則性を発見→証明→条件を変えて再度観察→規則性を発見→証明の流れを知っていただけたら幸いです。
また、実は今回得た「$n$が奇数のとき、連続する$n$個の自然数の和は$n$の倍数となる」という定理は、更に一般化することができます。それはまた次の記事で紹介しようと思うので、ぜひご期待を。
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