連続する数の和をもう少し深く研究!
前回の記事では、「連続する3つの自然数の和は、3の倍数になる」という定理から出発して、一般化の末に
「$n$が奇数の時、連続する$n$個の自然数の和は、$n$の倍数になる」ということを発見しました。
今回はこの定理を更に一般化していきます。
一般化の視点として、前回は「条件を少し変えて再度観察」という手法を使いました。
今回は、「定理を逆から眺める」という手法を使ってみようと思います。
「$n$が奇数の時、連続する$n$個の自然数の和は、$n$の倍数になる」という定理を、
「$n$が奇数のとき、$n$の倍数は連続する自然数の和で表すことができる」と読み替えて一般化できないか検討します。
(堪の鋭い方はこの読み替えで「連続する$n$個の自然数の和」が「連続する自然数の和」に変わっている点に少し違和感を持つかもしれませんが、ひとまず気にせず先に進んでください)
定理の逆が成り立つかどうか、一般化できるかどうか、という視点は、数学の研究でとても大切で、
かつ面白く楽しいポイントになります。
観察
3の倍数、5の倍数など、奇数の倍数については連続する自然数の和で表されることはすでに前回の記事で確認しています。
では、偶数はどうでしょうか?
$4=1+2+3$は成り立ちませんね。でも
$6=1+2+3$は成り立ちます。連続する自然数の和で表すことができる数と、そうでない数の違いは何でしょう?
観察していきます
$1=0+1$←$0$は自然数に含まれないので、ダメということにしておきましょう。
$2= \cdots$ちょっと見当たりません
$3=1+2$ OKですね
$4=\cdots$ ちょっと見当たりません
$5=2+3$ OKですね
$6=1+2+3$ OKですね
$7=3+4$ OKですね
$8=\cdots$ うまく思いつきません
$9=4+5$ OKですね
$10=2+3+5$ OKですね
$11=5+6$ OKです
$12=3+4+5$ OKです
$13=6+7$ OKです
$14=2+3+4+5$ OKです
$15=7+8$ OKです
$16=\cdots$うまく思いつきません
$17=8+9$ OKです
このくらい調べればデータとしては十分です。次へ進みましょう
規則性を見つける
連続する自然数の和で表すことができる数と、無理っぽい数を観察しました。
どうやら、連続する自然数の和で表すことのできる数の方が圧倒的に多そうなので、無理っぽい数だけ取り出して考えます。
$1, 2, 4, 8, 16, \cdots$
どうでしょう?何か規則性は見つかりましたか?この人たち、すごく特徴的ですよね!!
$2^0, 2^1, 2^2, 2^3, 2^4 \cdots$ すべて2のべき乗です!!!
今までの結果をまとめると、こんな予想が立てれそうです。
$2^kで表される数は、連続する自然数の和で表すことはできない (k=0, 1, 2,3, \cdots)$
証明
では、証明です。今回証明したいことは、語尾が「表すことはできない」という否定形になっていいます。
これは注目に値することです。証明の方法はいろいろありますが、否定形の証明は背理法がとても有効です。
早速試してみましょう。
証明
今、$2^k$が、$a$から始める連続する$b$個の自然数の和で表されると仮定する。
$2^k=a+(a+1)+(a+2)+\cdots +(a+b-1)$である。
等差数列の和の公式を利用して右辺を計算すると、
$2^k=\dfrac{1}{2}(2a+b-1)×b$となる。両辺を2倍して、
$2^{k+1}=(2a+b-1)×b$
よって、$2^{k+1}=(b+2a-1)×b$
ここで、右辺に着目する。$b$が奇数だとすると、$2^{k+1}が奇数の素因数をもつことになり、矛盾。$
$b$が偶数だとすると、$2a-1$は奇数なので、$b+2a-1$が奇数となってしまい、やはり矛盾する。
よって、背理法より、$2^kで表される数は、連続する自然数の和で表すことはできない (k=0, 1, 2,3, \cdots)$
まとめ
いかがでしたか?
定理を逆から眺める、という楽しみ方を知っていただけたら幸いです。
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