数学Ⅱの代数分野の花形といったら何を思い浮かべるでしょう?
虚数単位$i$?
多項式の割り算?
色々ありますが、僕は対称式です。
大学数学まで話を広げるとするならば、
対称式はガロア理論で中心的な役割を担う「群」という概念の導入として非常に優秀なので、
高校生の段階で親しんでおくことには大きな意味があると感じます。
対称式とは?
例えば、$\alpha +\beta$は対称式です。
$\alpha -\beta$は対称式ではありません。
でも$(\alpha -\beta)^2$は対称式です。
どうです?規則性は見えてきましたか?
もう少し観察してみましょう。
$\alpha \beta$は対称式です。
$\alpha^2 \beta$は対称式ではありません。
$\alpha^2+\beta^2+\gamma^2$は対称式です。
$\alpha +\beta^2 +\gamma^3$は対称式ではありません。
$\dfrac{1}{\alpha}+\dfrac{1}{\beta}$は対称式です。
そろそろ種明かしです。
対称式とは、ざっくり言うと
文字を入れ替えても変わらない式のことです。
$\alpha+\beta=\beta+\alpha$
は成立しますが、
$\alpha -\beta \neq \beta-\alpha$
です。
ゆえに$\alpha+\beta$は対称式ですが、
$\alpha-\beta$は対称式ではないわけです。
ちなみに、解と係数の関係に登場する対称式を
基本対称式といいます。
$\alpha +\beta$や$\alpha \beta$は基本対称式です。
文字が3つの場合は、
$\alpha +\beta+\gamma$や$\alpha \beta +\beta \gamma +\gamma \alpha$や$\alpha \beta \gamma$
が基本対象式です
解と係数の関係については以下の記事をご覧ください。
対称式の基本定理
対称式は、基本対称式で表すことができる。
これが対称式の基本定理です。
さらっとかいてありますが、結構ヤバい定理です(褒めてる)。
これがどのくらいヤバい定理なのかは、
方程式論を古典的なやり方で学ばないといまいち伝わらないと思いますが、
結論、ヤバいです。あと、証明もヤバいです。
一応高校生の知識だけで証明できるので、そのうち記事にしようと思います。
興味のある方はご期待ください。
では早速具体例を見ていきましょう。
問題演習
(問題)
$\alpha +\beta =5, \alpha \beta =2$のとき、
$\alpha^2+\beta^2$の値を求めよ
~脳内会議~
まず、$\alpha^2+\beta^2$は対称式ですので、必ず基本対称式で表せます。
材料は$\alpha +\beta$と$\alpha \beta$です。
この2つの材料から、四則演算で$\alpha^2 +\beta^2$を作り出さないといけません。
その際、大切なのは次数です。
$\alpha +\beta$は、どちらの文字に着目しても1次の式です。
しかし、$\alpha^2+\beta^2$は2次の式です。
次数を上げないといけません!
四則演算のうち、次数を上げることができるのはどれでしょう?
足し算→次数は変わりません
引き算→次数は変わりません
掛け算→次数は上がります
割り算→次数は下がります
(解答)
$\alpha +\beta$を2回かける。
$(\alpha +\beta)^2=\alpha^2+2\alpha \beta +\beta^2$
よって、$\alpha^2+\beta^2=(\alpha +\beta)^2-2\alpha \beta$
ここで、$\alpha +\beta=5, \alpha \beta=2$を代入すると、
$\alpha^2+\beta^2=5^2-2×2=21$
(解答終了)
別解
再度問題を提示しておきます。
(問題)
$\alpha +\beta =5, \alpha \beta =2$のとき、
$\alpha^2+\beta^2$の値を求めよ
~脳内会議~
さて、先ほどは基本対称式の
次数を上げるために掛け算を使う、
という発想で解答しました。
勘のいい方は、逆のやり方でもやれるんじゃね?
ということに気づかれたかもしれません。
すなわち、$\alpha^2+\beta^2$の
次数を下げてもいいんじゃね?
ということです。
次数を下げる四則は、割り算。
割り算の第一候補は因数分解です。
でも残念ながら今回の式に関しては因数分解はできません(因数分解が有効な場合もあります)。
となると、割り算の第二候補は、多項式の割り算です。
でもどうやって?
割られる式は$\alpha^2+\beta^2$としても、割る式がないぞ!?
と思うことでしょう。
条件に着目してください。
行き詰まったときは、定義の確認と条件の確認が鉄則です。
今回の問題の条件は、$\alpha +\beta=5, \alpha \beta=2$です。
2次方程式の解と係数の関係が使えます。
(解答)
条件より、$\alpha +\beta=5, \alpha \beta=2$であるので、
解と係数の関係より、$\alpha, \beta$は2次方程式
$t^2-5t+2=0$の解である。
よって、
$\alpha^2 -5\alpha +2=0$
$\beta^2-5\beta+2=0$
となり、移項すると
$\alpha^2=5\alpha-2$
$\beta^2=5\beta-2$
となる。
これらを$\alpha^2+\beta^2$に代入する。
$\alpha^2+\beta^2=(5\alpha-2)+(5\beta-2)$
$(5\alpha-2)+(5\beta-2)=5(\alpha +\beta)-4=5×5-4=21$
(解答終了)
今回は式が簡単なので移項だけで次数下げできましたが、
普通に多項式の割り算が有効な場合もあります。
まとめ
いかがでしたか?
・対称式とは、文字を入れ替えても変わらない式のこと
・対称式は基本対称式で表すことができる
・対称式の問題は、次数を上げる発想と、次数を下げる発想の2パターンの解法がある
・次数を下げる場合は解と係数の関係を利用
対称式を眺める目線に新たな視点が加わったのなら嬉しいです。
また次の記事でお会いしましょう!
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