数学Ⅱの知識で導く3次方程式の解の公式

3次方程式を数Ⅱの知識だけで解く
目次

2次方程式のおさらいから

2次方程式を解く手順は、大きく2ステップでした。

①最高次の係数を1にする

 $ax^2+bx+c-0$について、全体を$a$で割って

 $x^2+\dfrac{b}{a}x+\dfrac{c}{a}=0$にします

②平方完成で式を簡単にする

 $x^2+\dfrac{b}{a}x+\dfrac{c}{a}=0$を平方完成して移項すると

 $(x+\dfrac{b}{2a})^2=\dfrac{b^2-4ac}{4a^2}$から、

 $x=\dfrac{-b \pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a}$

3次方程式では、この考え方を応用していきます。

2次方程式について、詳しくはこちらを参照

3次方程式の立方完成

2次方程式と同じ手順を3次方程式にも応用していきましょう

①最高次の係数を1にする

 $ax^3+bx^2+cx+d=0$の全体を$a$で割って

 $x^3+\dfrac{b}{a}x^2+\dfrac{c}{a}x+\dfrac{d}{a}=0$にします。

②平方完成っぽいことをして式を簡単にする

 平方完成をそのまま3次方程式に応用することは残念ながらできません。

 少し工夫が必要です。

 平方完成をこう捉えてみましょう。

 簡単な方程式を得るために$y=x+\dfrac{b}{2a}$と置いて

 $y^2=〇$という簡単な式を解いている、という見方です。

 2次方程式の平方完成では$y=x+\dfrac{b}{2a}$という置き換えをしました。

 なんとなくノリでこれを3次方程式に当てはめるなら、

 $y=x+\dfrac{b}{3a}$という置き換えが上手くいきそうな予感がします(完全に勘ですが)

 試してみましょう。

 $x^3+\dfrac{b}{a}x^2+\dfrac{c}{a}x+\dfrac{d}{a}=0$について、$y=x+\dfrac{b}{3a}$と置き、

 $x=y-\dfrac{b}{3a}$を代入します。

 $(y- \dfrac{b}{3a})^3+\dfrac{b}{a}(y-\dfrac{b}{3a})^2+\dfrac{c}{a}(y-\dfrac{b}{3a})+\dfrac{d}{a}=0$

 3乗の展開公式$(a+b)^3=a^3+3a^2b+3ab^2+b^3$と

 2乗の展開公式$(a+b)^2=a^2+2ab+b^2$を用いて計算を進めていきます。

 $y^3+3y^2(-\dfrac{b}{3a})+3y(-\dfrac{b}{3a})^2+(-\dfrac{b}{3a})^3$

 $+\dfrac{b}{a}(y^2-\dfrac{2b}{3a}y+\dfrac{b^2}{9a^2})+\dfrac{c}{a}(y-\dfrac{b}{3a})+\dfrac{d}{a}$

$=y^3-\dfrac{b}{a}y^2+\dfrac{b^2}{3a^2}-\dfrac{b^3}{27a^3}$

 $+\dfrac{b}{a}y^2-\dfrac{2b^2}{3a^2}y+\dfrac{b^3}{9a^3}+\dfrac{c}{a}y-\dfrac{bc}{3a^2}+\dfrac{d}{a}$

$=y^3+(-\dfrac{b^2}{3a^2}+\dfrac{c}{a}-\dfrac{2b^2}{3a^2})y+(-\dfrac{2b^3}{27a^3}-\dfrac{bc}{3a^2}+\dfrac{d}{a})$

ここで、簡略のため新たに

$a_1=-\dfrac{b^2}{3a^2}+\dfrac{c}{a}-\dfrac{2b^2}{3a^2}, $

$a_2=-\dfrac{2b^3}{27a^3}-\dfrac{bc}{3a^2}+\dfrac{d}{a}$

と置きます。

つまり、

$y^3+a_1y+a_2=0$

を解けばよいことになります。(少し簡単になりました!)

解と係数の関係を発動

立方完成を用いて3次方程式を$y^3+a_1y+a_2=0$という形まで簡単にすることができました。

ここで昔の人は天才的なことをします。

$y=s+t$と置くのです。

なぜわざわざ項を増やして複雑にするの?と疑問に思うと思います。

僕はこの変形をはじめてみたとき、キツネに化かされたような気がしました。

どこからこの置き換えを思いついたかの考察は、また後程しようと思います。

ひとまずは先に進みましょう。

$y^3+a_1y+a_2=0$について、

③$y=s+t$を代入

$(s+t)^3+a_1(s+t)+a_2=0$

$s^3+3s^2t+3st^2+t^3+a_1(s+t)+a_2=0$

$s^3+3st(s+t)+t^3+a_1(s+t)+a_2=0$

これを$s+t$がいるグループと、それ以外のグループに分けてみます。

$(3st+a_1)(s+t)+(s^3+t^3+a_2)=0\cdots ㋐$

㋐の式を満たすような$s, t$を求めることができれば$y$が求まり、ついには$x$が求まります。

どうにかして㋐を満たす$s, t$を見つけたいわけです。

ひとまず

$3st+a_1=0$

$s^3+t^3+a_2=0$

という2つの条件を付けると㋐の式が成立するようになるので、これを満たす$s, t$を探します。

(これを満たす$s, t$が見つからなかったら、また別の方法を考えるわけですが、今回はこれでうまくいきます)

先ほどの2つの式を変形すると、

$st=-\dfrac{a_2}{3}$

$s^3+t^3=-a_1$

となります。

$st=-\dfrac{a_2}{3}$の両辺を3乗しましょう。

$s^3 t^3=-\dfrac{(a_2)^3}{27}$です。並べると、

$s^3+t^3=-a_1$

$s^3 t^3=-\dfrac{(a_2)^3}{27}$

これ、どこかで見たことありませんか?

そう、解と係数の関係です!

解と係数の関係に関しては、こちらの記事を参照してください。

④解と係数の関係を発動

2次方程式の解と係数の関係より、$s^3$と$t^3$は

2次方程式$u^2+a_1u-\dfrac{(a_2)^3}{27}=0$の解となります。

あとはこの2次方程式を解けば$s^3$と$t^3$が求まり、そして$s, t$が求まり、ついには$x$が求まります。

ここで、2次方程式を解くので、当然プラスマイナス2つの解が出てきますが、$s^3$と$t^3$は条件に偏りのない対等な2つの数なので、どちらをプラス、どちらをマイナスと置いても影響はありません、

そこで、とりあえずプラスの方を$s^3$、マイナスの方を$t^3$とします。

⑤2次方程式を解く

$u^2+a_1u-\dfrac{(a_2)^3}{27}=0$に2次方程式の解の公式を使うと、

$s^3=\dfrac{-a_1 + \sqrt{a_1^2+\dfrac{(a_2)^3}{27}}}{2},$

$t^3=\dfrac{-a_1 – \sqrt{a_1^2+\dfrac{(a_2)^3}{27}}}{2}$

となります。あまりに式が複雑すぎるので、新たに

$A=\dfrac{-a_1 + \sqrt{a_1^2+\dfrac{(a_2)^3}{27}}}{2},$

$B=\dfrac{-a_1 -\sqrt{a_1^2+\dfrac{(a_2)^3}{27}}}{2}$

と置きます。

$s^3=a$と$t^3=B$を解くわけです。

⑥$s^3=A$と$t^3=B$を解く

これ、地味に注意が必要です。

例えば$x^2=4$を解きます。

これの解は$x=2$

だけじゃなかったですよね

$x^2=4$の解は$x=\pm 2$でした。解は2つです。

同じように、$x^3=2$の解も、$x=\sqrt[3]{2}$

だけじゃないです。

これに1の三乗根$\omega$をくっつけないといけません。

ちなみに、$\omega$は$\omega^3=1$を満たすもので、1そのものではないものです。

ついでなので、少し脱線しますが、$\omega$も求めておきましょう。

$\omega^3=1$より、

$\omega^3-1=0$これを因数分解すると、

$(\omega -1)(\omega^2+\omega +1)=0$

いま、$\omega \neq 1$なので、

$\omega^2+\omega +1=0$

これに2次方程式の解の公式を使うと、

$\omega =\dfrac{-1 \pm \sqrt{3}i}{2}$

となります。通常、

$\omega =\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2}$と置きます。

また、計算すると分かりますが、

$\dfrac{1-\sqrt{3}i}{2}=\omega^2$です。

面白いですよね。

これについては興味深い話がいくつかあるので、そのうち「研究の楽しみ」のカテゴリーで取り上げようと思います。

今はとりあえず、これを覚えておいてください、

$x^3=2$の解は、$x=\sqrt[3]{2}$だけではなく、

$x=\sqrt[3]{2}, \omega \sqrt[3]{2}, \omega^2 \sqrt[3]{2}$の3つ

さて、3次方程式の話に戻りましょう。

$s^3=a$と$t^3=B$より、

$s=\sqrt[3]{A}, \omega \sqrt[3]{A}, \omega^2 \sqrt[3]{A}$

$t=\sqrt[3]{B}, \omega \sqrt[3]{B}, \omega^2 \sqrt[3]{B}$

となります。あとは$y=s+t$と$x=y-\dfrac{b}{3a}$から$x$が求まりそうです。

ですが。

このまま突き進むと思わに落とし穴にはまることになります。

$y=s+t$です。

$s$は3つあり、$t$も3つあります。

つまり、$y=s+t$の$s$と$t$の組み合わせは、

$3×3=9$です。

$y$が9個も出てきてしまいます。

3次方程式の解は、絶対に3つです。

このままだと多すぎるのです。

どうするか?

$st=-\dfrac{a_2}{3}$を使います。

⑦$st=-\dfrac{a_2}{3}$を使って答えを絞り込む

$-\dfrac{a_2}{3}$は実数です。

よって、$st$は実数でなくてはなりません

$\omega=\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2}$なので、$i$があるため$\omega$は実数ではありません。

つまり、$st$を計算した時に、$\omega$や$\omega^2$が残るようなものは不適なのです。

$\omega^3=1$に注意して調べていくと、

$s=\sqrt[3]{A}, \omega \sqrt[3]{A}, \omega^2 \sqrt[3]{A}$

$t=\sqrt[3]{B}, \omega \sqrt[3]{B}, \omega^2 \sqrt[3]{B}$のうち、

$st$が実数となるような$(s, t)$の組は、

$(s, t)=(\sqrt[3]{A}, \sqrt[3]{B}), (\omega \sqrt[3]{A}, \omega^2 \sqrt[3]{B}), (\omega^2 \sqrt[3]{A}, \omega \sqrt[3]{B})$のみです。

(例えば$(s, t)=(\omega \sqrt[3]{A}, \omega^2 \sqrt[3]{B})$のとき、

$st=\omega \sqrt[3]{A}× \omega^2 \sqrt[3]{B}$

$=\omega^3 \sqrt[3]{A} \sqrt[3]{B}=1×\sqrt[3]{A} \sqrt[3]{B}=\sqrt[3]{A} \sqrt[3]{B}$

となり実数です。

しかし、$(s, t)=(\omega \sqrt[3]{A}, \omega \sqrt[3]{B})$のときは、

$st=\omega \sqrt[3]{A} ×\omega \sqrt[3]{B}=\omega^2 \sqrt[3]{A } \sqrt[3]{B}$

となり、$\omega^2 $が残って実数になりません)

⑧解を求める

$(s, t)=(\sqrt[3]{A}, \sqrt[3]{B}), (\omega \sqrt[3]{A}, \omega^2 \sqrt[3]{B}), (\omega^2 \sqrt[3]{A}, \omega \sqrt[3]{B})$より、

$y=\sqrt[3]{A}+\sqrt[3]{B}, \omega \sqrt[3]{A}+\omega^2 \sqrt[3]{B}, \omega^2 \sqrt[3]{A}+\omega \sqrt[3]{B}$

となり、$y=x+\dfrac{b}{3a}$から、

$x=-\dfrac{b}{3a}+ \sqrt[3]{A}+\sqrt[3]{B}, $

$-\dfrac{b}{3a}+\omega \sqrt[3]{A}+\omega^2 \sqrt[3]{B}, $

$-\dfrac{b}{3a}+\omega^2 \sqrt[3]{A}+\omega \sqrt[3]{B}$

として解の公式が求まります。

ただし、

$A=\dfrac{-a_1 + \sqrt{a_1^2+\dfrac{(a_2)^3}{27}}}{2}$

$B=\dfrac{-a_1 – \sqrt{a_1^2+\dfrac{(a_2)^3}{27}}}{2}$

$a_1=\dfrac{c}{a}$

$a_2=\dfrac{d}{a}$

です。

考察

ここで、少々ときを巻き戻して、

$y^3+a_1y+a_2=0$について

$y=s+t$と謎の置き換えをしたのはなぜか、という点を考えてきたいと思います。

当時の人と会話することはできないので、

こんな発想で思いついたんじゃないかな~という、

あくまで考察であり予想であると割り切って生暖かい目で読み進めてください。

まず、$y^3+a_1y+a_2=0$について、$y^2$の係数が0である点に着目します。

3次方程式の解と係数の関係を$y^2$の部分に発動します。

3つの解は適当に$\alpha, \beta, \gamma$とでも置きましょう。

すると、$\alpha +\beta +\gamma=0$が導かれます。

これの対称性を崩すわけです。

移行して、$\alpha=-\beta -\gamma$となります。

$y^3+a_1y+a_2=0$の形の3次方程式に関しては、

3つの解のうち、ある1つを他の2つで表すことができるのです。

このことから、$y^3+a_1y+a_2=0$について$y=s+t$と置く、という天才的な発想に至ったのだと思われます。

和の条件が与えられたとき、移項して対称性を崩す

というアイデアは、大学入試でもめっちゃよく使うので(特にベクトルの問題)、入試でベクトルを使う方は覚えておいて得する知識と思います。そうでない方も、この天才的なひらめきの一端を教養として知っておくだけでなんだか嬉しい気持ちになるので、ぜひ記憶にとどめておきませんか?

まとめ

いかがでしたか?

①最高次の係数を1にする

②立方完成で式を簡単にする

③$y=s+t$を代入

④解と係数の関係を発動

⑤2次方程式を解く

⑥$s^3=A$と$t^3=B$を解く

⑦$st=-\dfrac{a_2}{3}$を使って答えを絞り込む

⑧解を求める

長大なストーリーでしたね。

高校数学の数Ⅱまでの内容のみで3次方程式に挑むというのが今回の企画でした。

結構ハードな内容だったと思います。

ちなみに今回の解法はカルダノの方法と呼ばれています。

カルダノさんが世に広めた方法だからです(ちなみにカルダノさんんが解いたわけではないらしいです)。

カルダノの方法以外にも3次方程式を解くやり方はいろいろありますが、今回はこのあたりでお時間のようです。

ここまで読んでくれた方、

マジでありがとうございます!!

また次の記事でお会いしましょう!

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