「互いに素」を使って原始ピタゴラス数の公式を導出

ピタゴラス数

ピタゴラス数を求める公式の完全バージョンをゲットしましょう!!

目次

原始ピタゴラス数、再考

ピタゴラス数とは、$a^2+b^2=c^2$が成立する自然数$(a, b, c)$のことです。

そして、原始ピタゴラス数とは、3つの数$a, b, c$に互いに素、という条件を付けたものになります。

互いに素とは、最大公約数が1である、ということです。

前回の記事では、原始ピタゴラス数が無限に存在することと、$(a, b, c)$を求める式を導出しました。

そこで得た成果は、次のものです。

互いに素である3つの自然数$(a, b, c)$で、

$a^2+b^2=c^2$と$c=b+1$を満たすものは

$(a, b, c)=(2m+1, 2m^2+2m, 2m^2+2m+1)$

で表される。

前回の内容についてはこちらの記事をご覧ください。

そう、我々は一応ピタゴラス数を無限にゲットする式をすでに保有しているのです。

が、しかし。

前回ゲットした式は$c=b+1$という条件がついた状態で初めて成立する式でした。

これは極めて特殊な場合といってよいでしょう。

(観察したサンプルが2個だけだったので、

特殊な場合しか見つからなかったのはある意味しかたないですけどね)

数学者の目で、次何をするか考えてみましょう。

$c=b+1$という条件を一般化できないか?

という新たなチャレンジが始まります。

$c=b+1$という条件なしの原始ピタゴラス数を見つけたいわけです。

ワクワクすっぜ!

公式の導出や証明は、どの条件に着目するかという点が非常に重要です。

まずは、今回の研究したい問題を文言にしてみましょう。

~原始ピタゴラス数について~

互いに素な3つの自然数$a, b, c$を考える。

このとき、$a^2+b^2=c^2$となる自然数の組$(a, b, c)$を求める公式を導出する

青マーカーが今回のゴールです。

これを、条件に着目して再度見直します。

互いに素な3つの自然数$a, b, c$を考える。

このとき、$a^2+b^2=c^2$となる自然数の組$(a, b, c)$を求める公式を導出する

緑マーカーと、黄色マーカーが条件です。

どちらの条件に重きを置くかによって2パターンの導出があり得るのですが、

今回は緑マーカーの条件に着目していきます。

黄色マーカーバージョンも別の記事でやってみようと思うので、

気に入った方のやり方をエンジョイしてください。

では進めていきましょう!

公式の導出(互いに素に着目した場合)

互いに素な3つの自然数$a, b, c$を考える。

このとき、$a^2+b^2=c^2$となる自然数の組$(a, b, c)$を求める公式を導出する

~脳内会議~

今回は「互いに素」という条件が全てです。

また、この方針では、問題を「整数の問題」として捉えているので、

①掛け算にする ②大小関係でしぼる ③割った余りで分類

のどれかで戦うことになります。

二乗が沢山あるので、移項すれば和と差の積の因数分解で掛け算にできそうです。

今回は①のルートを試してみましょう。

また、「互いに素」という条件を上手く使うためには、それぞれの文字が

奇数なのか、偶数なのか、が分かっていると都合がよいです。

$a^2+b^2=c^2$の左辺について、

$(a, b)=(奇数, 奇数), (偶数, 奇数), (奇数, 偶数), (偶数, 偶数)$

を順に試していきましょう。

$(奇数, 偶数)と(偶数, 奇数)$は実質同じなので、どちらかでいいです。

こういう、どっちでもいい場合は、とりあえずこっちの場合を考えるね、

そうしても一般性を損なわないよ!という記述をします。

一般性を損なわない、という表現は大変便利なのでぜひ覚えておいてください。

計算してみると分かりますが、$(奇数, 奇数)$の場合は4がめっちゃ出てくるので、

③の4で割った余りに着目するテクニックも使います。

さて、ここまでまとめたうえで、アタックしていきます!

見通しがよくなるようにポイントとなるところにオレンジマーカーをつけてみました。

(導出)

3つの自然数$a, b, c$について、

$a, b$がともに偶数であると仮定する。

すると、$a=2m, b=2n$となる。($m, nは自然数$)

$a^2+b^2=c^2$に代入すると、

$4m^2+4n^2=c^2$となり、$c$も偶数でなければならない。

すると、$a, b, c$が全て偶数であることになり、3つの数が互いに素であることに矛盾する。

次に$a, b$がともに奇数であると仮定する。

すると、$a=2m+1, b=2n+1$となる。($m, n は0以上の整数$)

$a^2+b^2=c^2$より、

$(2m+1)^2+(2n+1)^2=c^2$

展開すると、

$4(m^2+m+n^2+n)+2=c^2$

となり、$c^2$は4で割って2余る数となる。

$c$は偶数か奇数かのいずれかであるが、

$c$が偶数の場合は$c^2$は4の倍数となり、

4で割った余りは0でなければならない。

$c$が奇数の場合は$c=2k+1$となり、

$c^2=4(k^2+k)+1$より4で割った余りは1でなければならない。

よって、いずれの場合も$c^2$を4で割った余りは2になりえないので、これは矛盾。

したがって、$a, b$は一方が奇数で、もう一方は偶数である。

以下では、$a$が奇数、$b$が偶数として考える。

こう考えても一般性は損なわれない。

ここで、$a^2+b^2=c^2$である。

$a$が奇数であるので、$a^2$も奇数となり、

$b$は偶数であるので、$b^2$も偶数である。

よって$c^2$は奇数となり、$c$は奇数である。

$a^2$を移項すると、

$b^2=c^2-a^2$

よって$b^2=(c-a)(c+a)$

ここで、$c, a$はともに奇数であるので、$c-a, c+a$はともに偶数である。

よって、$\dfrac{c-a}{2}, \dfrac{c+a}{2}$が自然数でなければならない。

これを用いて変形をすると、

$b^2=4・\dfrac{c-a}{2}×\dfrac{c+a}{2}$となる。

左辺$b^2$が二乗数であるので、左辺も二乗数でなければならない。

4は平方数である。

よって$\dfrac{c-a}{2}×\dfrac{c+a}{2}$も平方数でなければならない。

ここで、$\dfrac{c-a}{2}$と$\dfrac{c+a}{2}$の最大公約数を$g$と置く

すると、2数$\dfrac{c-a}{2}$と$\dfrac{c+a}{2}$は、互いに素な2つの自然数$s, t$を用いて

$\dfrac{c-a}{2}=gs, \dfrac{c+a}{2}=gt$と表すことができる。

よって、

$c-a=2gs$

$c+a=2gt$

となり、この連立方程式を解くと、

$c=g(t+s), a=g(t-s)$となる。

すると、$a, c$は公約数$g$を持つことになるが、これは$a, c$が互いに素であることに矛盾するので、

$g=1$でなければならない。

すると、、2数$\dfrac{c-a}{2}$と$\dfrac{c+a}{2}$も互いに素であることになり、

$b^2=4・\dfrac{c-a}{2}×\dfrac{c+a}{2}$

と合わせて、$\dfrac{c-a}{2}$と$\dfrac{c+a}{2}$はそれぞれ平方数でなければならない。

$\dfrac{c-a}{2}=A^2, \dfrac{c+a}{2}=B^2$と表すことにすると、($A, B$は互いに素な自然数)

$c-a=2A^2$

$c+a=2B^2$

より、この連立方程式を解くと、

$c=B^2+A^2, a=B^2-A^2$となる。

今、$a^2+b^2=c^2$より、

$(B^2-A^2)^2+b^2=(B^2+A^2)^2$である。

整理すると、$b^2=4B^2A^2$である。

したがって、$b=2BA$

以上のことから、$(a, b, c)=(B^2-A^2, 2BA, B^2+A^2)$となる。

(導出終了)

まとめ

いかがでしたか?

今回は「互いに素」をよりどころに公式を導出しました。

整数問題としてのアプローチです。

結構ややこしいですよね。

互いに素をよりどころとして上手く背理法を組み合わせつつ、

4で割った余りを活用したり、因数の分析をしたりと、

思考力と判断力が要求されます。

でもそれゆえに、原始ピタゴラス数を整数問題としてとらえる問題は、

大学入試で結構出題されたりします(記憶に残っている範囲だと、京大とか早稲田とか)。

ピタゴラス数という神秘を眺めたことがある者へのボーナスのように僕は感じました。

次回は今回とはまた違った視点でピタゴラス数の公式を導出しようと思うので、お楽しみに!

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