整数係数多項式
あと
これらが円分多項式の著しい性質。
今回は、
証明でフィナーレを飾りましょう!
定義のおさらいから
円分多項式の定義を確認しましょう。
結構えぐい数式が出てきますが、あとで具体例を確認しますので、ご容赦を。
新しい数学を学ぶときは、
えぐい数式発見→意味不明で焦る→具体例を確かめる→納得して落ち着く
の繰り返しで前に進んでいくものです。
円分多項式の定義は、
(定義)
このとき、
を円分多項式といい、
というものでした。
記号を確認していきましょう。
まず
これは和の記号シグマの掛け算バージョンです。
次に
これは、
まずは
1,2,3,4
のうち、4と互いに素なのは
1と3です。
よって
次に
これは掛け算なので、
です。
ここで、
要するにこれは
それを確かめておきましょう。
ここで、
つまり、
となります。
次は少し複雑な
まず
を処理します。
1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12
のうち、12と互いに素なものは、
1,5,7,11です。
よって
あとは
したがって、
です。
頑張って右辺を展開して整理すると
というなんともシンプルな式が出てきます。
円分多項式ってなんであんなヤバい定義なの?
という点が気になる方は以下の記事をご覧ください。
円分多項式を発見する過程を追体験してみませんか?
円分多項式の性質① の因数分解
円分多項式の面白いところは、
何といっても
例えば
これは、円分多項式を用いて次のように因数分解されます。
見事に12の約数の円分多項式が並んでいます。
これが一般に
ヤバくないですか?
これを証明します。
(定理)
が成り立つ
ここで、
という記号が見慣れないと思うので、補足します。
これは、
~脳内会議~
いきなり証明せよ、と言われても何から手を付ければいいのやらさっぱりです。
このような時は、具体例の観察が非常に重要となります。
とりあえず、小さめの数の
です。
これを、
から逆算的に並び替えてみましょう。
で、複素数平面上に図示すると正六角形になります。
それぞれが
のうち、どの円分多項式の材料になっているか図に書き入れてみます。

と分かります。
これから規則性をつかんでいきましょう。
もともと、円分多項式は最大公約数が1の奴らで構成されていたので、
指数と最大公約数に着目してみます。
なるほど。
同様にして議論を進めていきましょう。
これらのことから、
の奴らだけ取り出して、
積を取ったやつが円分多項式となっていることを示せればよさそうです。
(証明)
いま、
を積の記号
と表す。
この左辺について、
と置く。
より、
と置くことができる。
すると、
について、
を満たす。
また、
であり、ド・モアブルの定理から
である。
これに
を代入すると、
が成り立つ。
であったので、
となる。円分多項式の定義より、この式の右辺は
すると、
となる。
(証明終了)
円分多項式の性質② 整数係数多項式
(定理)
円分多項式
これを示すにあたっては、
先ほど示した因数分解の性質
を使います。
また、この定理は
数学的帰納法を用います。
しかし、普通の帰納法ではなく、累積帰納法を用いますので、注意してください。
(証明)
数学的帰納法を用いて示す
円分多項式の定義より、
このとき、
いま、円分多項式の性質①より、
である。
ここで、帰納法の仮定より、
㋐の右辺に登場する円分多項式のうち、
よって、㋐の右辺に登場する円分多項式のうち、
ここで、円分多項式はその定義より最高次の係数は1であるので、
いま、
であるので、
ここで、
最高次が1の整数係数多項式を、最高次が1の整数係数多項式で割った商も
整数係数多項式でなくてはならないので、
(証明終了)
まとめ
いかがでしたか?
証明めっちゃ長かったですが、言いたいことは2つだけ。
・
・円分多項式は整数係数多項式
のみです。
なんか今回の記事を書いていて、学生時代に数学書を読んだ時のことを思い出しました。
あの頃は、ある数学書を3行理解するのに19時間くらいかかってました笑(ノイキルヒのことです)
また次の記事でお会いしましょう!
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