有理化の一般化その①

有理化の問題
目次

高校で習う有理化

まずは高校で習う有理化のおさらいをしましょう。

初めにシンプルな$\dfrac{1}{\sqrt{2}}$パターンの有理化を習います。

分母に根号が一つだけあるパターンですね。

これをパターン①としましょう。

これは分子と分母に$\sqrt{2}$をかければよいです。

$\dfrac{1}{\sqrt{2}}=\dfrac{1×\sqrt{2}}{\sqrt{2}×\sqrt{2}}=\dfrac{\sqrt{2}}{2}$となります。

次に$\dfrac{1}{3+\sqrt{2}}$パターンを習います。

これをパターン②とします。

まずはパターン①とパターン②は何が違うのか、という点を把握しておかなければなりません。

分母に着臆すると、パターン①は分母の数が1個でしたが、パターン②は分母に2個の数があります。

要するにパターン②は分母が2項の式なのです。

なので、パターン①と同じように$\sqrt{2}$を変えるだけはうまくいきません。

$\dfrac{1×\sqrt{2}}{(3+\sqrt{2})×\sqrt{2}}=\dfrac{\sqrt{2}}{3\sqrt{2}+2}$

そこで、和と差の積の公式を使うのでした。

$(a+b)(a-b)=a^2-b^2$

パターン②の場合では、$a=3, b=\sqrt{2}$と思うと上手くいきます。

分子と分母に$3-\sqrt{2}$をかけましょう。

$\dfrac{1×(3-\sqrt{2})}{(3+\sqrt{2})×(3-\sqrt{2})}=\dfrac{3-\sqrt{2}}{(3)^2-(\sqrt{2})^2}=\dfrac{3-\sqrt{2}}{9-2}=\dfrac{3-\sqrt{2}}{7}$

次にチャートなどの問題種でパターン③に出会います。

$\dfrac{1}{1+\sqrt{2}+\sqrt{3}}$

初見だと結構難しく感じると思います。

難しい問題に出会ったときの対処法は2つです。

   1.何がこの問題を難しくいている原因か考察する。

   2.かつて似た問題をやったことはないか脳内を検索する。

パターン③の有理化が難しく感じる原因は、分母が3項である点です。

パターン②までは分母が2項まででした。

我々は、分母が2項の場合はパターン②で解くことができます。

そこで、ちょっと無理やりですが、パターン③の分母を2項だと思い込んでみます。

$1+\sqrt{2}+\sqrt{3}=(1+\sqrt{2})+\sqrt{3}$

要するに、分母を1と$\sqrt{2}$と$\sqrt{3}$の3項と考えるのではなく、$1+\sqrt{2}$と$\sqrt{3}$の2項であると考えます。

これでパターン②の和と差の積の考え方が適応できそうです。試してみましょう。

$\dfrac{1}{1+\sqrt{2}+\sqrt{3}}=\dfrac{1×\lbrace (1+\sqrt{2})-\sqrt{3}\rbrace}{\lbrace (1+\sqrt{2})+\sqrt{3}\rbrace \lbrace (1+\sqrt{2})-\sqrt{3})}=\dfrac{1+\sqrt{2}-\sqrt{3}}{(1+\sqrt{2})^2-(\sqrt{3})^2}=\dfrac{1+\sqrt{2}-\sqrt{3}}{2\sqrt{2}}$

こうすることで、パターン③はパターン①まで単純化されました。

$\dfrac{1+\sqrt{2}-\sqrt{3}}{2\sqrt{2}}=\dfrac{(1+\sqrt{2}-\sqrt{3})×\sqrt{2}}{2\sqrt{2}×\sqrt{2}}=\dfrac{\sqrt{2}+2-\sqrt{6}}{4}$

よって、$\dfrac{1}{1+\sqrt{2}+\sqrt{3}}=\dfrac{2+\sqrt{2}-\sqrt{6}}{4}$です。

ここまでが数学Ⅰで習う有理化です。

数学Ⅱになると、例えばこんな有理化を習います。

$\dfrac{1}{2+3i}$

しかしこれは、$i=\sqrt{-1}$であることを考えると、本質的にパターン②です。

そう、高校数学では、パターン①、パターン②、せいぜいパターン③までしか登場しません。

これをもう少し深めて楽しんでみようぜ!というのが今回の記事です。

数学はスルメです。噛めば噛むほど楽しさが分かってくるようになります。

前置きが長くなりましたが、本編に入っていきましょう。

高校で習う有理化のその先へ

我々はパターン③までの有理化はできるようになりました。

では、こんなのはどうでしょう?

$\dfrac{1}{3+\sqrt[3]{2}+\sqrt[3]{4}}$

パターン③じゃん! と思えます。試してみましょう。

$\dfrac{1}{3+\sqrt[3]{2}+\sqrt[3]{4}}=\dfrac{1×\lbrace (3+\sqrt[3]{2})-\sqrt[3]{4}\rbrace}{\lbrace (3+\sqrt[3]{2})+\sqrt[3]{4}\rbrace ×\lbrace (3+\sqrt[3]{2})-\sqrt[3]{4}\rbrace}=\dfrac{3+\sqrt[3]{2}-\sqrt[3]{4}}{9+6\sqrt[3]{2}+\sqrt[3]{4}-\sqrt[3]{8}}$

ここで、$\sqrt[3]{8}=\sqrt[3]{2×2×2}=2$に気を付けると、

$\dfrac{1}{3+\sqrt[3]{2}+\sqrt[3]{4}}=\dfrac{3+\sqrt[3]{2}-\sqrt[3]{4}}{7+6\sqrt[3]{2}+\sqrt[3]{4}}$です。

分母に$\sqrt[3]{2}$も$\sqrt[3]{4}$も残ったままです。

根号の種類が全く減ってません…。

どうやら今までの方法ではうまくいかないようです。

そこで、何が難しい原因なのか分析します。

今回の問題と、今までのパターン①~③を、比較しながら観察します。

新たな難しい問題と出会ったとき、研究する楽しみの視点が大いに役に立ちます。

さて、今までと今回の違いは、分母に三乗根がいるという点です。

これがこの問題を難しくしている犯人となります。

こいつをどう処理していくかが今回のポイントです。

ではどう考えるか。今までの知識をベースに、少しだけ修正をしていきます。

参考になるのはパターン②です。

パターン②では、分母の式が2項になり、それを解決するために和と差の積の公式を使いました。

$(a+b)(a-b)=a^2-b^2$

今回は三乗根がいるので、和と差の積の公式は使えません。

しかしこれと似たような式で三乗が出てくる式があれば上手くいきそうな気がします。

そんな式あったでしょうか?

$(a-b)(a^2+ab+b^2)=a^3-b^3$

ありました。

なんかこれでいけそうな気がしますが、結論から言うと、今回はうまくいきません。

なぜか。

それは、分母が3項だからです。三乗が2つでは足らず、三乗が3つ必要になります。

今回の有理化を実現するには、三乗が3個出てくる因数分解の式が必要になります。

そんな式あったけ?

実はあります。入試でたまに使うあいつです。

$(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)=a^3+b^3+c^3-3abc$

$a=3, b=\sqrt[3]{2}, c=\sqrt[3]{4}$と思ってこの式を活用してみます。

$\dfrac{1}{3+\sqrt[3]{2}+\sqrt[3]{4}}=\dfrac{1×\lbrace(3)^2+(\sqrt[3]{2})^2+(\sqrt[3]{4})^2-3×\sqrt[3]{2}-\sqrt[3]{2}×\sqrt[3]{4}-\sqrt[3]{4}×3\rbrace}{(3+\sqrt[3]{2}+\sqrt[3]{4})×\lbrace(3)^2+(\sqrt[3]{2})^2+(\sqrt[3]{4})^2-3×\sqrt[3]{2}-\sqrt[3]{2}×\sqrt[3]{4}-\sqrt[3]{4}×3\rbrace}$

$=\dfrac{9+\sqrt[3]{4}+\sqrt[3]{16}-3\sqrt[3]{2}-\sqrt[3]{8}-3\sqrt[3]{4}}{ (3)^3+(\sqrt[3]{2})^3+(\sqrt[3]{4})^3-3×3×\sqrt[3]{2}×\sqrt[3]{8}}=\dfrac{7-\sqrt[3]{2}-2\sqrt[3]{4}}{15}$

有理化できました!!

$(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)=a^3+b^3+c^3-3abc$は

相加相乗の大小関係を3項の場合に一般化する際にも活躍しますが、今回の有理化でも大活躍です。

高校数学から大学数学へ

ここまでのことを整理してみましょう。

高校数学では、パターン①~③までの有理化を習います。

しかし、これでは分母に三乗根がいる場合は対処できませんでした。

要するに、高校数学での有理化は、ルートの世界までしか広がっていないのです。

そう、高校数学で見れる景色は、ルートを添加した体(たい)まで。

パターン①とパターン②は$\mathbb{Q}(\sqrt{2})$で、パターン③は$\mathbb{Q}(\sqrt{2}, \sqrt{3})$です。

そして、今回の有理化は$\mathbb{Q}(\sqrt[3]{2})$の世界で行われています。

今回の有理化で、$\mathbb{Q}(\sqrt[3]{2})$が除法について閉じていることが確認されました。

さて、研究者の目で今までのことを眺めてください。

次は何をすると思いますか?

$\mathbb{Q}(\sqrt[4]{2})$や$\mathbb{Q}(\sqrt[5]{2})$そして$\mathbb{Q}(\sqrt[n]{2})$を調べてみたくなりませんか?

実は、今回の有理化は一般化できます!

また近いうちに記事にしますので、ご期待ください。

ユークリッドの互除法を使います。

体(たい)という言葉になじみのない方は、以下の記事をご覧ください

まとめ

いかがでしたか?

・高校で習う有理化は、ルートの世界まで

・高校の有理化の武器は$(a+b)(a-b)=a^2-b^2$

・$\mathbb{Q}(\sqrt[3]{2})$の世界の有理化では$(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)=a^3+b^3+c^3-3abc$を使う

・有理化を一般化したい

といった流れを楽しんでいただけたらと思います。

続編

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